透明人間の色




「___ありがとうなんて、言わないでよ」



気がつけば怒鳴っていた。


「え?」

「あっ………ごっごめん。じゃあね」


どうしたらいいか分からなくて、逃げるようにして電話を切った。


本当にサイテーだ。


自分の部屋に戻ってベットにダイブする。

苦しむ資格なんてない。けど、心が暴れて苦しい。


顔を枕に埋めて言葉にならない感情を思いっきり叫んだ。


「___っ、う」


過呼吸みたいに喘いで、泣き叫ぶ。

こんな風になったのは久しぶりだ。明日は美香と会うっていうのに、とても気が重かった。

今は美香と合わせる顔がない。やはり断ろうか。

美香の誘いを断るなんて初めてだけど。


そう迷い始めた時だった。


ピローン


握りしめたままだった携帯が鳴る音が。

どうするか一時間くらい迷って、いや現実逃避が出来なくなって、私はそのメールを開いた。

メールは二件入っていた。

“結局、明日何時?”

という美香からのメールと、



“美香に明日誘われてるんだったら、行くな”



という達也くんからのメール。



「なんで…?」


どうして、達也くんは行っちゃダメって言うんだろう?





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