透明人間の色
朝四時、携帯のアラームが鳴った。
私は音をたどって、それを切る。うるさいような音ではないけど、やっぱり寝るには向かない曲だ。
つまり、起きるのに向いている。
私は起き上がって目をパチクリさせた。ベットの横の机に目をやれば昨日選んだ服が置いてある。最近買った流行りのものだ。
私はベットを下りてそれを手に取る。
「…着る機会があって良かった」
自分でもなんとも変な呟きだと思う。
だけど、私の部屋にある服たちは、美香に誘われなければ着ることのない服たちだ。
その中から私は今日の一着しか選んではいけない。
だから、私はそんな服たちの残酷な処刑人。
今日選ばれなかった流行りの夏の服は、きっともう一生着られることはないだろう。
そうなれば、その服の生まれた価値はどこにもない。
「なんで、要らないのに買っちゃうんだろう?」
答えは知っていたけど、そう呟かずにはいられなかった。
たぶん、それは認めたくなかったからだ。
流行りの着られることのない服たちは、その他大勢の中の一つでしかなく、特別なんかじゃないから代えがきく。
それはまるで私みたいだった。