透明人間の色



気がつけば五時まであと三十分になっていた。

バックをつかんで、財布があることを確認して家を出る。

朝五時の外は夏にしては心地よい。

太陽が暖かいと思える。私はゆっくり二十分かけてあのアイスクリーム屋さんに向かった。

予想していたことだけど、アイスクリーム屋さんが見えると同時にその店の前に立つ人影を見つけた。


美香だ。


私は早足に美香に近づいていった。それが分かったのか、美香が軽く手を振ってくる。


嬉しくって、駆け出した。


昨日が昨日だっただけに、私の胸にできた小さなくぼみが、美香を求めていた。



「美香っ!」

飛びつくと美香は私を支えた。
私はそのまま顔を美香にスリスリしてから、美香を見た。

「随分な歓迎ぶり」

苦笑いの美香が私と目があってそう言う。

私はその変わらない表情に知らず知らずに安心を覚えていた。



「だって、夏休みは遊べないと思ってた」


「なんで?」

「だって、“秋限定”って送ってきたでしょ?」




「あー、達也に教えてもらったの?」


達也という言葉に、私の心臓がドクンと跳ねた。


< 147 / 248 >

この作品をシェア

pagetop