透明人間の色
「えっと、達也くんって、なにが?」
我ながら怪しいくらいにしどろもどろに聞く。
しかし、それを気にした風もなく美香は言った。
「“秋限定”の意味、達也に教えてもらったんじゃないの?」
普段は推測をそんな断定的に言うことのない美香が、そう首をかしげる。
でも、首を傾げたいのはこっちだ。
「なんで、そう思うの?」
私にだって、夏限定アイスクリーム食べた後に、美香からメールで“秋限定”って来たら、秋にまた遊べるんだって分かるもん。
そんなこと達也くんに聞くまでもない。
「…いや、そっか。うん、実はさ、秋に行くことはたぶん出来ない」
「そうなの?じゃあ、今日はその代わり?」
「まあ、そうともとれる」
美香にしては歯切れの悪い物言いに、私は美香を抱きしめた手を離した。
嫌な予感がした。
達也くんから来たメールが頭のなかで今さら反復される。
「美香…?」
自分でもおかしいと思うくらいに、歪んだ笑顔で出した声は震えていた。
でも、そんな私の鏡のように美香も歪んだ笑顔で答えたんだ。
無理矢理、本当になんでもないことのように、それを口にした。
例えるなら、今日の朝御飯がトーストだったくらいな、どうでもいい話をする時のテンション。
まるでいつもと変わらないみたく。
「私たち、友達やめよう」
全部がいつもと違うのに。