透明人間の色




「えっと、達也くんって、なにが?」


我ながら怪しいくらいにしどろもどろに聞く。

しかし、それを気にした風もなく美香は言った。


「“秋限定”の意味、達也に教えてもらったんじゃないの?」


普段は推測をそんな断定的に言うことのない美香が、そう首をかしげる。

でも、首を傾げたいのはこっちだ。


「なんで、そう思うの?」


私にだって、夏限定アイスクリーム食べた後に、美香からメールで“秋限定”って来たら、秋にまた遊べるんだって分かるもん。


そんなこと達也くんに聞くまでもない。


「…いや、そっか。うん、実はさ、秋に行くことはたぶん出来ない」


「そうなの?じゃあ、今日はその代わり?」

「まあ、そうともとれる」


美香にしては歯切れの悪い物言いに、私は美香を抱きしめた手を離した。


嫌な予感がした。


達也くんから来たメールが頭のなかで今さら反復される。



「美香…?」

自分でもおかしいと思うくらいに、歪んだ笑顔で出した声は震えていた。

でも、そんな私の鏡のように美香も歪んだ笑顔で答えたんだ。

無理矢理、本当になんでもないことのように、それを口にした。

例えるなら、今日の朝御飯がトーストだったくらいな、どうでもいい話をする時のテンション。

まるでいつもと変わらないみたく。





「私たち、友達やめよう」




全部がいつもと違うのに。



< 148 / 248 >

この作品をシェア

pagetop