透明人間の色
高校生にして正義ごっこをやっている割には、そういうところが未発達で___いや、自分も人のこと言えるほどのもんじゃないが___年相応だ。
正義ごっこって言っても、別に華やかな戦隊ものの真似事をしているわけじゃない。
もっと、ずっと滑稽な正義ごっこだ。
それはちょうど、この歌詞に合わない、コミカルなリズムみたいな、上手く言葉には出来ないが、とにかくそんな感じだ。
しかし、自分はそんなのが好きなのだから、仕方がない。
そんなお気に入りの音楽をかけながら、時折ミラーで後ろの主を見て、今日の本当の目的地へと向かった。
この音楽のよさをこの主は理解していない。
だが、最初こそ文句を言っていたが、最初は諦めたように何も言わなくなった。
きっと、この曲を歌えと言われたら応えられるくらいに聞いているせいだろう。
聞きすぎて、この曲が良いのか悪いのかも、たぶんよく分からなくなったというところだ。
「守木」
不意に名前が呼ばれた。
「はい」
突然のことに我に返ると、ミラー越しに主がこちらを睨んでいる。
はあ。
黙ったと思ったら、これだ。
「なんですか?」
自分は先程も同じようなことを言ったが、自分は沈黙は嫌いじゃない。
「…お前っ」
「はい」
「………なんでもない。なんか、しゃべろ」
しかし、自分の主はそうではないらしい。