透明人間の色




真っ直ぐで、不器用で、可愛い。

そんな形容を自分がするなら、それはミラーに写ったこの主だろう。


そう考えて、主が不機嫌になるのが分かっていても堪えきれない笑いが、のどにくすぶった。


咳をして誤魔化すと、主が案の定不機嫌に睨んでくる。


自分のクソ主がこんな顔をするなんて、以前なら思わなかった。

だからだ。



だからこそ、尚更主にこんな顔をさせているのが、彼女であることが悔やまれる。



笑いが、冷めた。


「失礼しました」


主のこの不器用な片想いを笑ってあげること。

それは自分にだけ出来ることであって、出来ないことでもある。


自分の主は、一般の高校生とは少し違う。


だから、どこにでもあるような片想いなのに、笑っちゃうくらい自分は切なくなる。


自分の恋じゃないし、少女漫画みたいなドキドキ展開もない。



だけど、この恋に自分はどんなものよりも、心を締め付けられる。




それが、自分の主のことだと、それだけで。


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