透明人間の色
「それが狙いだから。楓は分からなければ達也に聞く」
「あー、それって美香ちゃん恋のキューピッド?」
「私はそんないい人じゃないけどね」
恋のキューピッドは好きな人同士をくっつけるのであって、自分の都合で男女をくっつけたりしないと思う。
運命の女神様はそういうのが好きそうだけど。
私は今度こそ送信ボタンを押した。
「終わった?」
「うん」
「じゃあ一旦これ没収ね」
晶人さんが私のスマホをひったくる。
それを見た私は、ふと高校に合格した時のことを思い出した。
「………美香ちゃん、なにニヤニヤしてるの?」
ばつの悪そうな顔をしてそう聞いてくる。それがあまりにも可愛かったので、私は正直に答えてあげた。
「晶人さんがスマホ買ってくれた日のことを思い出してたの」
「あー」
それ以上は追及してこなかったのは、きっと私の考えていることが分かったからだろう。
でも、晶人さんをからかう材料を私はみすみす逃したりしない。
「私がスマホ欲しいって言ったら剣幕な顔してたよねー」
「それは___」
「スマホは美香ちゃんを駄目にするから買わない、だっけ?」
「そっ、そうだよ」
「でもさ、私が晶人さんとすぐにどこでも連絡できるから欲しいって言ったらさ、次の日の朝枕元に最新のスマホあるんだから、慌てん坊のサンタクロースもビックリだよね」
「美香ちゃん」
もう止めてと言わんばかりに私の名を呼ぶので、私はご飯をしている口に運んだ。今日のところはたくさんからかえたのでこれで満足だ。
いつもからかわれっぱなしではこちらも敵わない。これくらいの仕返しがちょうどいい。
「あっ!」
「ん、どうしたの美香ちゃん?」
「………例の件、まだやってなかった」