透明人間の色
そんなこと、なんでこんなにボロボロの俺にわざわざ聞くんだろう。
俺には世界なんてクソにしか思えなかった。綺麗なわけが、なかった。
理由はともかく首を横に振った俺に、あの人は言った。
今も変わらない能面みたいな顔をしていながら、悦びに顔を歪めたその唇から、それを言い放った。
“では、一緒に世界を掃除しましょう”
おかしなことを言う人だと思った。第一印象は最悪だ。頭のネジの一本や二本は外れている変人。そう脳内で分類された。
でも、俺は差し出されたその手をとった。
おしゃべりな祖母は、偽善者だ。俺を救ってはくれない。
俺をいじめる奴は、ゴミだ。将来は大体穀潰しか薬中のどちらかだろう。
こんな絶望的な世界から連れ出してくれるなら何でもよかった。
その手が変人の手だろうが、将来が掃除のおじさんだろうが、行き着く先が地獄だろうが、本当に、ここから抜け出せるのなら、その時の俺はその手をとった。
こうして、俺の歪んだ正義ごっこが始まったのだ。