透明人間の色
俺のそんなくだらない感傷から我に返った時、あの人がまたしゃべり始めた。
「これまで、私たちは腐りきった日本の中枢にメスを入れ、少しずつ我らが同士の権力を拡大を行ってきました。その裏の存在であるここに集まったあなた方に日本改造計画が最終段階に入ったことをここに宣言いたします」
冷めきった拍手が起こった。
なんのことはない。
そんなことは俺じゃなくても誰もが知っていた。
みんな、この歪んだ正義が悲願を実現する日は間近だと、計画の確認だけをするために集まったこの会議でさえ、まどろわしいほどに、急いている。
だが、あの人はそんな心情に意も返さず、言った。
「しかし、計画の話に入る前に、皆さまに紹介したい人がいます」
あの人は手をすっと上げると、俺が入ってきたドアが開く。
「わが息子、霧蒼です」
逆光で、ドアの向こうから来たその少年は、眩しくて俺たちには一瞬見えなかった。
が、次いで暗いこちらの部屋の中へ歩いてくる少年の顔が見えて、美香がイケメンだと評した顔と同じだと、当たり前のことを思った。