透明人間の色
俺はこの登場に驚かなかったが、場は騒然としている。
多分、会ったことがあるのは俺くらいなんだろう。
「静かに」
湖面の波紋のような声に一同が黙ると、あの人は言った。
「蒼、皆さまに挨拶を」
少年はいつのまにかあの人の左横に立っていた。
俺が見ていることに気づいたその少年は、はっきりと顔をしかめた。
六年前も思ったし、美香が連れてきた時にも思ったが、この少年は素直すぎる。
この闇の世界じゃそんなもの要らない。
大人になりきれない子供が、この組織を担わせるのは正直な話、酷だと思う。
大人の事情というやつは、いつだって自分勝手で仕方がない。
でも、こんな子供を祭り上げなければ、この組織は成立しない。