透明人間の色
俺はその甘ったれた顔に首を傾げて見せる。さらに険しくなった眉間に、俺は薄く笑った。
それが最高に気に入らなかったのだろう。
口よりもおしゃべりな瞳が怒りに煌めく。こういうところなんかは、あの人そっくりだ。こうして並べてみると面白いくらいに似ている。
そう考えて、俺は大笑いしたくなった。
この少年の顔があの人似じゃなかったら、どうなっていたんだろう?
何か変わっていただろうか?
運命ってのは残酷で、する選択の結果をシュミレーションさせてくれはしない。
答えは神のみぞ知るってわけだ。
不覚にも笑みを深くしてしまった。
それを見たらしく少年は、こちらへ怒りにまかせて来ようとする。
しかしして、偶然にかあの人に止められた。
「挨拶を」
その声に息子への優しさや慈しみは微塵も感じなかった。
ああ、なんて残酷な人なんだろう。
自分の子供を神のように祭り上げといて、心底憎んでいるなんて、まとも人のやることじゃない。
そんな人についているこの場の全員も、ちゃんちゃらおかしい。
本当にこんなにも自分達のやってることが滑稽だと思ったのは初めてだ。
でも、それでも、俺はこの人を正義だと言い張ろう。
悪役には悪役の正義があるように、ここにもここの正義がある。
正義はそう簡単には変えられない。
俺の正義の場所はここだ。
たとえ、美香と対立する正義であろうと。