透明人間の色


それは僕は夏の終わりあの日。
僕が東城美香という人を初めて認識したあの日に、起こった。



東城美香本人は知らない出会いだ。


僕は正義ごっこの仕事でしばらく学校を休んでいて、放課後職員室に休んでいて分のプリントを取りに行かされた。

その帰りの話だ。


三階の東階段を降りながら、どうせ捨てるプリントをかかえて僕は不機嫌だった。


出来るなら守木を呼び出して、プリントを今すぐ渡してしまいたい、みたいなことを考えていたかもしれない。


そうやって二階まで降りて行くとき、大きな何かが落ちる音と悲鳴、そして下品な笑い声を聞いた。


“あはは、いい気味”

“ざまあ”

“ぶりっこ”



………どうやらこの先には嫌なことが起きているらしい。


僕は思わず階段を降りるのを止めた。面倒なことは嫌いだ。


“じゃあねー、ぶりっこ小野楓ちゃーん”


しばらくすると、そう言って三、四人が立ち去る音がした。

僕はそれを聞いてやっと足を進めた。
すすり泣く声がはっきりと聞こえてきた。

別に、落ちた大きな何かを拾って上げようと思ったわけじゃない。



僕は落ちた何かを無視して階段を下りるつもりだった。



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