透明人間の色
夏休み後半、そうしたぐーだら生活が始まって、私は晶人さんのくっつき虫と化していた。
とはいえ、晶人さんにも仕事がある。私も一応受験勉強がある。別々な時間も多かった。
受験について晶人さんに聞いてみると、高校三年生の夏はとても大切なんだそうだ。
晶人さんなら、別に大学なんて行かなくてもここに居ればいいと言うかと私は勝手に思っていたけど、予想に反して晶人さんは大学に進むことを進める。
それが少し不満だったから問いただしてみると、
やっと口にしたのは
“僕は美香ちゃんより早く死ぬからね”
と、そんなことだった。
私が晶人さんより長く生きる。
それは当たり前のことだった。
でも、そんなのもっと歳をとってからの話だし、そこまでおばさんになってしまえば、大卒かどうかなんて関係なしに就職なんて難しいんじゃないだろうか?
晶人さんの意図が分からない。
まるで、もうすぐ死ぬかもしれないと言われたようなそんな気分になった。
もうすぐ夏休みが明ける。
携帯は放置したまま、充電はとうに無くなっていた。
あの二人は、私によって歪められた日常を取り戻しているだろうか。
夏休みが明けなければいいのにと思ったのなんて、これが初めてだ。