透明人間の色



「んーもう、やってらんないー」


「ホント、それな。なんで初デートでふられなきゃなんねーんだよ」


ここは居酒屋のカウンター席……ではなく、真っ昼間の公園のベンチである。

そこに腰かける高校三年生のその二人は、夏休みの終わりに嘆いていた。

その辺の酔っぱらいよりも絡むと面倒くさそうだが、夏休みの終わりに嘆くと言ってみると普通の高校生のような気もするから不思議だ。


が、いかんせん彼らにとっては世界のオワリのような出来事だったことに間違いない。


「美香って、時々意味わかんないー」

「ああ。そういう時の美香は日本語をしゃべってない」


かれこれ一時間くらいはこの調子の二人は、公園で遊ぶ子供の保護者に嫌な目で見られていることを気にもとめず、さらに東城美香を罵り続けた。


「私なんてさー、最初に会話したの、友達は多い方が好き?って、そんな感じの質問だったんだからねー」


「は?それ、お前なんて答えたんだよ?」

「いや、首横に振っただけなんだけどさー」



小野楓は空を見上げて目を細めた。


「そしたら、じゃあ私と友達になってーって美香が」



「へー」

つられたように、笹本達也も上を見上げる。


空は皮肉なほど綺麗な色をしているのに、眩しくて、気がつけば手をかざしていた。

けど、その手が掴むものは何もない。



当たり前が虚しい時、それは人が弱ってる時なのかもしれない。


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