透明人間の色
「私さ、美香に好かれてる自信あったの」
不意に小野楓は口を開いた。
「好かれてるよ」
笹本達也のその返事に、小野楓はチラリとだけ彼を見て、また空を見上げた。
「あー違う、かな」
楽しげな口調に反して、その口元は少しだけ震えている。
「ん?」
「好かれてるか、どうかじゃないんだよねー」
「は?」
いやー、と空に向かってそれでも小野楓は笑って見せた。
「一緒に居たいかどうか、なんだよ。きっと、ね」
あー、私バカだったなーと、そう言う小野楓の頬をもう何回目か分からない雫が優しくなぞるのを、笹本達也は見てみないふりをする。
その横顔はこの数日ずっと考えていたことの結論が、何だか拍子抜けするほど簡単だった時のような、そんな苦い顔だった。
その気持ちが痛かった。