透明人間の色
二人して放心状態になりかけた時だった。
「夏休みの高校生がこんなところで何をしてるんだい?」
優しげな声がして、慌てて二人は正面を向き直った。
そこには声のイメージと不自然なほど一致している、優しげな顔をした若い美丈夫。
「あっあの、こんにちは?」
恥ずかしげに小野楓は小さく頭を下げるが、笹本達也は、
「あっ…」
笹本達也は言葉を失っていた。
この人物が誰なのかを知っていたからだ。
「どうしたの?達也くん」
様子が変なことに気がついた小野楓が、心配そうに笹本達也の顔を覗き込むが、笹本達也は真っ直ぐに目の前の美丈夫を見ていた。
不意にその口が動いて、
「もしかして、晶人さんですか?」
と、そう聞いた声は驚きを隠しもしていなかった。
「そうだよ」
こんなにも柔らかな笑顔に疑問を持ったのも、初めてかもしれない。