透明人間の色




二人して放心状態になりかけた時だった。


「夏休みの高校生がこんなところで何をしてるんだい?」


優しげな声がして、慌てて二人は正面を向き直った。

そこには声のイメージと不自然なほど一致している、優しげな顔をした若い美丈夫。


「あっあの、こんにちは?」

恥ずかしげに小野楓は小さく頭を下げるが、笹本達也は、


「あっ…」

笹本達也は言葉を失っていた。



この人物が誰なのかを知っていたからだ。


「どうしたの?達也くん」

様子が変なことに気がついた小野楓が、心配そうに笹本達也の顔を覗き込むが、笹本達也は真っ直ぐに目の前の美丈夫を見ていた。


不意にその口が動いて、



「もしかして、晶人さんですか?」

と、そう聞いた声は驚きを隠しもしていなかった。



「そうだよ」

こんなにも柔らかな笑顔に疑問を持ったのも、初めてかもしれない。



< 200 / 248 >

この作品をシェア

pagetop