透明人間の色
「何しに来たんですか?」
その非難めいた声は晶人の核心をつく。
「なにって、達也くん。仲直り、したいんだよね?美香と」
美香“ちゃん”と呼んでいた晶人が彼女を呼び捨てに変えたとき、被っていた化けの皮がはがれる。
「仲直り、させてあげる。ただし、条件付きで」
開いた口が塞がらないとはこのことか。
しかし、二人が面を食らっている間も、晶人は笑顔で続きをしゃべる。
「なかなか良い条件だよ。君たちは何があっても美香のために行動するってそれだけ」
それはまるで悪魔の囁き。
「あっあの!」
突然、小野楓が我に返ったように言う。
「そもそも、貴方は誰なんですか?」
一瞬の沈黙の後、また晶人はコロコロと笑う。なぜか耳障りに感じるその声に、さすがの小野楓が顔をしかめた。
その顔を見て、晶人さんはやっと真面目な顔を作る。
「あーそうだね。君とは初めましてだった」
まるで自分は違うとでも言うような口調に、小野楓が首をかしげる。
「初めまして。美香ちゃんの保護者の晶人です」