透明人間の色
「美香の保護者………?」
信じられないとでも言いたげな小野楓の様子にも晶人は笑顔を崩さない。
「うん。そうなんだ。美香ちゃんのご両親が亡くなっているのは知ってる?」
「はい。………本人から聞いたわけじゃありませんが」
「そうなんだ。じゃあ、そこにいる達也くんから聞いたのかな?」
「そうです」
小野楓は笹本達也の方をチラリと見てから答えた。
「でも、美香は一人暮らしをしているはずでは?」
「そうだね。でも、当時はまだ小学六年生の女の子だよ」
「あっ、確かに」
小野楓はそれっきり俯いてしまう。
晶人の言い方は、頭の弱そうな小野楓に丁寧に説明してくれているだけなのだと思うのに、お前は何も知らない部外者なのだと、言われているような気にさせる。
「うん。だから、美香ちゃんを引き取った」
「はあ」
そう素直に俯いたまま頷く小野楓だが、しばらくするとまだ疑わしげな顔をして、晶人を見た。
「ん、なーに?」
晶人が笑って小野楓を促すが、どうにもこうにも胡散臭い。
「あの」
「うん」
「そんな………少女漫画的な展開ってアリなんですか⁉」
「うん?」
言っている意味が分かんないんだけど、という意が含まれてそうな“うん?”に、笹本達也は本当の晶人を垣間見たような気がした。
この瞬間少しだけ晶人の笑顔が自然にひきつったように、そう笹本達也には見えたのだ。