透明人間の色
「えっと、そんなのないと思うんですけど……でも、なんかあれじゃないですか?イケメンお兄さんに引き取られた美少女って………不謹慎かもしれないけど」
言っていて途中から自信がなくなったのか、小野楓の声が小さくなっていく。
最終的に、
「あっと、なんかすみません」
そう謝ってしまった。
そんな小野楓に、徐々に余裕を取り戻し始めた晶人は、クスリと笑う。
「謝る必要はないよ」
「はっはい」
はいと言いつつ頭を下げる小野楓。
嫌な感じのする人に謝ったり恐縮するあたり、彼女はやはり八方美人だ。
そして、そんな彼女の目の前の晶人という人物にも、そんなことが言えそうだが、こちらの中身は、悪魔。
「………いや、でも意外と鋭いね。女の子の勘かな」
そう、悪魔なのだ。
小野楓を試すように見る妖しげな瞳。
しかし、小野楓には何を言われたのか瞬時に理解することができなかった。
そんな彼女の代わりに、笹本達也は震える声で言う。
「それ、どういう意味ですか?」
その言葉に振り返った晶人の心底楽しげに歪んだ口元。笹本達也は晶人しゃべる前から絶望した。
「そのまんまの意味だよ」
ほら、そして紡がれるのは、最低最悪な言葉で、
「美香ちゃんの保護者っていうのも本当だけど、恋人でもあるんだ」
己のためなら人々を地獄へと誘うことの出来る化け物。