透明人間の色



「恋人………」

呟くように繰り返したのは小野楓だった。笹本達也は目を見開いたまま、動かない。


ただ、晶人だけがその状況で微笑んでいた。


「そんなわけだから、まあ美香ちゃんと仲直りするのに助けが必要になったら、美術部のハナって子を訪ねればいいよ。合言葉は“紫”」


「ゆかり?」

「うん。そうそう。じゃあ、長いこと美香ちゃんを待たせると泣かせちゃうから」


そう言って、立ち去ろうとした晶人。しかし、笹本達也はその腕を掴んだ。


「待て」


「なーに?」

優しい微笑みの口元と反比例する目の冷たさを称えた晶人が振り返る。


「美香は………」


「ん?」


「美香は、俺が好きなんだよ」


その言葉に確かに晶人の空気はガラリと変わった。


「知ってるよ?」


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