透明人間の色
暗い部屋の中、パソコンを眺めながらポテチを食べていると、玄関のチャイムが鳴った。
放っておいても良かったが、十五回目に鳴った時、僕は諦めの悪い誰かに降参する。
立ち上がるのが面倒だったので、パソコンを少し弄って部屋のロックを外した。
なんか言って入ってくるかと思ったけど、無言でズカズカと誰かが入ってくる音が聞こえる。
あー、なんか面倒なことがやってくる予感。
案の定、お構いなしに僕の部屋のドアを開けた彼女は、僕に怒鳴った。
「ちょっと、あんた誰かも確認せずに___」
「開けるなって?大丈夫だよ。ここまで上がってこれた時点で、仲間か美香さんか紫の三択だから」
「なっ、なにかあって暗殺者___」
暗殺者だったらどうするの?
そんな言葉を紡ごうとした彼女は、やっと後ろについて来ていた女に気がつく。
「うん。そこまででストップね。その後ろの可愛い女の子、僕に紹介してよ」
「あっ………」
戸惑いの笑みを浮かべた女はきっとこういう部屋に馴れてない。
六台のパソコンと、三つのキーボード。暗闇でそれらが光ると、なんだか怪しげだろう。
そしてそう思うことは正しい。
別に世の中に害をなそうとしている訳じゃないけど、今の僕が表を歩ける人間じゃあないのは確かだから。
「えっと、あの…」
「あー、ごめんね。俺の名前を先に名乗るべきか。僕の名前は___破名、なんだっけ?」
「破名って呼ばないで」
変なところにこだわる彼女。
なんでだろう。
彼女だって僕と同じ、名前なんてどうでもいいと思う人種だと思っていたのに。