透明人間の色
「なに、見てるのよ」
彼女が不審げにこちらを見た。
暗闇の中で見つめ合う二人、とかそのまま描写したらなかなか悪くないのに、そんな顔じゃとてもじゃないけど面白くない。
だから、僕はわざとらしくため息をつく。
「いやー?ただ、ハナナンがモテないわけだと思っただけ」
「余計なお世話よ」
「うん。まあ、そうだね」
これ以上は何も生まれないと悟ったので、言葉を適当に濁す。
そして、改めて小野楓を見た。
「さて、ここに来たってことは、覚悟が出来ているのかな、小野楓ちゃん?」
すると、答えたのは案の定彼女で。
「覚悟してもらうためにここに来たの」
「えー、そうなの?」
「はっはい!」
要するに面倒な説明を僕に押し付けに来たわけだ、彼女は。
全く、嫌になっちゃうね。
「じゃあ、言うけど。この通り、僕たちは本当は表を歩けない人間なんだ」
面倒だから、こんな適当な説明しても許してね。