透明人間の色
しばらくは突っ立っていたと思う。でも、大した時間ではない。
私は踵を返すと、久しぶりにパジャマ以外の服に袖を通した。折角だからお洒落をしようと思ってクローゼットを開くと、見覚えのない服がたくさんある。
どれも私の好みじゃない。晶人さんの好みだろう。
いつの間に。
可愛いの着てほしいとか、一回も言われたことない気がするけど、本当は着てほしいと思ってた?
でも、もうそんなの考えても仕方がない。
私は部屋に設置された無数のそれを壊した。
未練と共に、いくつも、何回も。
見ないフリはもう終わりにするんだ。
知らないフリも。
私はバカじゃない。
残ったのは歪んだ黒い残骸。
監視カメラ、それだった。
きっと私と晶人さんが一緒にいたのはこういう黒い塊でしかなかったんだと思う。
お互いが必要で、でも、優先事項は他にあった。彼の腕の中で感じた信用も安らぎも、偽物でしかなくて、満たされない。
でも、それもなくなった後に想像せられる虚無が、関係を踏みとどめさせた。
でも、それも今日で終わり。
嘘にまみれた理想の世界にさようならを告げて、
目を背けた真実を見つけにいこう。
あの晶人さんだった人の正体を、知るときがきたんだ。