透明人間の色
黒い塊を真新しいビニール袋の中に捨てた。生憎今日は生ゴミの日だし、本当には捨てられないけど。でも、捨てたという事実が欲しかった。
きっと、もうここには帰ってこない。
クローゼットから引っ張り出して着た服は、私には似合わない純白のワンピースだ。
鏡の前に立ってみると、その似合わなさ加減が今日という日にぴったりで気に入った。
ふと目に入った髪どめは、以前晶人さんがプレゼントしてくれたもの。ただのラインストーンの装飾だと思ってたけど、きっと全部本物なんだろうと思う。
それも身に付けて、ふと鏡の中の少女と目があったのでじっと見つめ返すと、その少女が口を開いた。
“ニセモノ”
そう言った少女を私は首を横に振って否定した。
“本物だよ”
確かに私と晶人さんとの関係は嘘で成り立っていたようなものだ。それを象徴するようなこの髪飾り。ラインストーンだと“思った”んじゃない。
“思い込もう”とした。
でも、それは確かに私が晶人さんを求めた証であり、このダイヤモンドひとつひとつが晶人さんが私を求めた証だったのは事実で。
本物だ。
私が今、それを認めたことでこの髪飾りは本来の価値を取り戻したんだ。
それだけは否定できない。
私は貴方の本当を知ろうと思う。貴方の帰る場所がここじゃないとしても迎えにいこうと思う。
そこに恋愛感情があるかは分からない。
達也のことも、一番大事で好きで、達也の唯一でありたかったけど、恋愛感情かは私にはもう分からない。
ただ、特別だった。