透明人間の色
楓も、蒼も、達也も、晶人さんも。私の狭い世界の中で見つけた特別だった。
私の中には特別なものなんて何もなくて、自分の都合のいいものしか本当は欲しくなくいのだと、ずっとそう思っていた。
けれど、全部手離して分かったのは、自分の都合のいいものにしても、どれでもいいわけじゃないってことで。
偽善者とか正義とか全部かなぐり捨ててしまえば、私は彼らが欲しいのだ。
楓の誰にでも好かれたいと思っている貪欲さが安心した。
蒼の偽悪的な優しさがおかしかった。
達也の誰にでも好かれる性格が憎らしいほど好きだった。
晶人さんが私の全てを受け入れてくれたことは感謝しきれない。
でも、その感情に名前をつけるのも、そこに自分の弱さを見るのも、もうやめようと思う。
数少ない私の“特別”。
それだけでいい。
必要だ、それだけで手を伸ばす価値がある。
こんな私だから傷つけることはたくさんあるだろう。傷つくこともあるだろう。
嘘だって必要だし、互いの中で譲れない価値観もある。
分かってたのに、私は間違ったんだ。
誰も私が完全なる善であることを望んだわけじゃきない。彼らの前で全てが完璧だったわけでもない。
それでも、私の側にいてくれた人達だ。
私が偽善者だろうと関係なく、私の中の何かに価値を見つけてくれた人達だ。
世界は醜く汚いけれど、綺麗なところがないわけでもなく、愛せないものでもない。
無理矢理、綺麗にしようとしなくてもその一部を愛してくれる人がいるなら、それで良かったんじゃないだろうか。
この手から溢れ落ちたものは、もう手に入らないこともあるんだと思う。
けど、私はこれから最初で最後の足掻きを見せようと思う。
もう、失うものもないんだから。