透明人間の色
家を出た私は晶人さんが与えてくれたマンションに向かった。
高校での独り暮らしは晶人さんに私が頼んだことだった。
晶人さんはあまりいい顔をしなかったけど、その頃から私は何か変わらなきゃと思っていたんだ。
最後まで手放せなかった晶人さんとの空間だけど、心の底では一番駄目だと思っていたことだったのかもしれない。
マンションに着くと、私は自分の部屋ではなく、その隣の部屋をノックした。
「すみません。晶人さんの居場所を教えてください」
返事はない。
ふと、思い出して自分の部屋に入って机の引き出しにある三百万弱の札束を手に、コンセントに向かって叫んだ。
「この三百万で教えていただけますかっ!」
完全に変な人だが、勝算がないわけじゃないと思う。
「うるさいんだけど」
ほら。
「すみません」
私はいつの間にか私の部屋の扉に寄しかかっていた彼を振り返り見た。
「なりふり構ってられないので」
そんな私にニヤリと笑った彼は、いつかの時とは違って少年ぽさはなかった。
「だろうね」
年相応の顔をしていた。