透明人間の色
「いつから盗聴いや、監視されてたの分かってたのかな?」
「………今気がついたとも、最初からとも言える」
「ふーん」
興味深そうにこちらを見る彼は、笑ってるようで笑っていない。
「バカだと思ってたけど、さすが、あの方の“目”だけはあるね」
「それって___」
「うん、そうだよ」
私は唇を噛んだ。思ったより強かったのか血の味がしてくる。
「私、晶人さんを探してるの」
「そんな人は知らないな」
「っ、貴方の雇い主よ」
「たった三百万では僕の情報は買えないよ。それに僕の雇い主の情報は非売品でね」
「その雇い主が今死にそうだとしても?」
「うん。そんなことは出会った時から知ってたし」
「いいの?」
「僕らの主が決めたことだ。どんなにくだらないと思ったって、止めない」
「………」
「分かったら、大人しく待ってなよ。きっと生きて帰ってくるって」
投げやりな言葉に、私はさらに言うべきことが見つからなかった。
その代わりのように口から滑り落ちたのは、
「………あなたたちはいったい何をしているの?」
そんな質問だった。
晶人さんが命をかけて私より優先するものは一体なんなんだろうか。
その質問に彼は、少し考えてから、上手く言葉が見つからないものを、無理矢理言葉にしたように答えた。
「うーん、正義ごっこ?」