透明人間の色
あの日のクルクル傘の変質者は守木亮介と名乗るようになり、うちの組織に入り、そう時間も経たない内に幹部となる。
なにがあったって?
歩道橋の手すりから身を引き、責任とれと訴えてきたのである。
なんの責任かと僕は惚けてみせたのだが、死ぬのを止めた瞬間、自分の命の責任は僕にあるのだと、ぬけぬけと言った時は、逆に腹が煮えくり返った。
が、しつこいが故に根負けし、使ってみるとまあなかなかに使えることも分かったから、他を探すのも面倒だし、側に置いてやってこの通りだ。
今でも守木の殺したという人のことを僕は知らない。
ただ、あの時守木が振り回していた傘には爆弾が仕掛けられていた。
歩道橋からただ飛び下りる準備とは思えない。
あれは自分以外の誰かを殺すためものだ。
そして、最も可能性の高いのはこの僕。
「蒼様」
「………」
「目標確保。チームFと合流します」
「………人は人を裁けない」
霧蒼が呆然としている間に仕事を終えた守木は、運転席に乗り込もうとして固まった。
「でも、お前が裁きたかったのは___」
言いかけた言葉は、寸前で飲み込まれる。
「蒼様、自分は裁きたい者などいません」
力強い否定。
「でも___」
「自分は、この世の中のどんな部分も愛してるんです」