透明人間の色
通信が切れた。さよならだ、とそう言った晶人さんは何を思ってただろう。
「花」
「うるさい、あと私は破名」
「同じだよ」
「同じじゃない」
拗ねたように破名だと言う女がいた。それをニヤニヤ見ている男は、なんなのだろうと思ったけど、とにかくそんな悠長に考えている暇はない。
晶人さんの意思は固い。なら、直接とめるしかない。
「あなたたち、何をするつもりなの?」
「だから、正義ごっこだって言ってるでしょ」
「具体的なことを聞いてるの」
「………教えないよ、特に君には。ね?」
同意を求めるように男は破名の顔をのぞきこむ。
「そうね、そうするべきなんでしょう。でも、私は本当は正義なんて微塵も興味なんかない」
「おっ、急展開?」
「黙って。東城美香、あんた本気でこの作戦を止める気あるの?言っとくけど、命の保証もないし仮に生き残ってもあとに待ってるのは地獄よ」
試すように私を射る瞳に逃げてしまいたくなる。
けれど、その向こうに私の譲れないものがあるんだ。私が諦めたくないのは正義でも偽善でもなく、私の大切な人たち。
それだけ。
「覚悟なんて、ここに来る前にしてたよ」