透明人間の色
設定。
誰も生き残るつもりのない改革。
「無責任だなとか思ってる?」
確信をつくように男が言った。何を考えているのか分からない笑顔のなかで、視線だけが鋭く私を射抜く。
知っている。彼らだけが無責任なわけじゃない。生きてるだけでみんな無責任に息をしなければ生きていけない。
綺麗事が通用する世界が理想だと思っていたし、それを目指すべきなのだと課していたのは自分だけれど、それでも今なら思うのだ。
綺麗事が通用しないから悪なんじゃないって。
「………無責任だとは思うけど、悪いわけじゃない」
「悪いわけじゃない、か」
なるほどなるほど、とそう笑う男をハナが蹴った。しかし、蹴られた側の男はさらに声をあげて笑うばかり。
「心配しないで。浮気じゃないから」
「なっ、そんな心配してない!っていうか、いつあんたと付き合った?」
「あはは」
笑う男と怒る女。
破名だと言った彼女は花だった彼女よりも口癖が悪いけど、表情豊かだ。
「んじゃ、殴られる前に次のアクションでも考えますか」
「そうね。あとで殴る。今は時間がない」
「えっ、何回殴るおつもりで?」
「さあ?気分次第」
男が肩をすくめて再びパソコンに向き合った。