透明人間の色
「まあ、この作戦を今から止めるのは難しい。それぞれ持ち場が違うし、こっちは戦闘力皆無だし」
「………私は戦える」
口をはさんだ破名に男は一瞬振り返ったが、首を横に振った。
「そうだね。でも、君だけじゃ彼女を庇って最後までたどり着くことは不可能だ」
「最後?」
「ああ。この作戦を今から止めるなら、おばさんを止めるしかない」
「それって、霧蒼の?」
「そういうこと」
そう言ってパソコンのエンターキーを押した男は、画面を見るように顎で示す。
「おばさんがいるのはこの作戦の一応本部になってるここ。でも、ほとんど指示は出してない。それぞれが独断で動いてる。俺たちもそうだ」
「仲が悪いの?」
「いや、そうじゃない。指揮が必要ないほど、それぞれ作戦に対して明確な意思と実力がある。それだけの理由さ」
「明確な意思………」
社会に離反し、死ぬ覚悟を持つ。それに明確な理由を持てる人の集まり。
本当にそうだろうか。日本を変えるほどの組織の大きさで。
「不思議かい?」
男が首を傾げる私に問いかける。私はコクリと頷いた。
「指揮が必要ないなんて、この規模の組織であり得ない」
「本当だね。普通じゃあり得ない」
なぜか男は破名を見て、破名は目を背けた。男は笑ったままだったけど、そこには複雑な感情があるように思えた。
だけど、私の視線に気づいたのか、
「………でも、出来てしまうんだから仕方がない。そして、今はそれが有利だ。おばさんを守る護衛はそんなに多くない」
と、明るい声を出す男。
案外、周りをよく見てる気遣い屋なのかもしれないと思った。よく笑うのも、それが理由なんじゃないかと。
でも、真相は分からない。
気がつけば分からないことだらけだ。
人はみな、決まりきった単調でつまらない人生を送るのだと思っていた。
なのに、今は何も分からない。
「まずはともあれ人材確保さ」
それでも、人は歩くのを止められないのだ。
「………私は戦える」
口をはさんだ破名に男は一瞬振り返ったが、首を横に振った。
「そうだね。でも、君だけじゃ彼女を庇って最後までたどり着くことは不可能だ」
「最後?」
「ああ。この作戦を今から止めるなら、おばさんを止めるしかない」
「それって、霧蒼の?」
「そういうこと」
そう言ってパソコンのエンターキーを押した男は、画面を見るように顎で示す。
「おばさんがいるのはこの作戦の一応本部になってるここ。でも、ほとんど指示は出してない。それぞれが独断で動いてる。俺たちもそうだ」
「仲が悪いの?」
「いや、そうじゃない。指揮が必要ないほど、それぞれ作戦に対して明確な意思と実力がある。それだけの理由さ」
「明確な意思………」
社会に離反し、死ぬ覚悟を持つ。それに明確な理由を持てる人の集まり。
本当にそうだろうか。日本を変えるほどの組織の大きさで。
「不思議かい?」
男が首を傾げる私に問いかける。私はコクリと頷いた。
「指揮が必要ないなんて、この規模の組織であり得ない」
「本当だね。普通じゃあり得ない」
なぜか男は破名を見て、破名は目を背けた。男は笑ったままだったけど、そこには複雑な感情があるように思えた。
だけど、私の視線に気づいたのか、
「………でも、出来てしまうんだから仕方がない。そして、今はそれが有利だ。おばさんを守る護衛はそんなに多くない」
と、明るい声を出す男。
案外、周りをよく見てる気遣い屋なのかもしれないと思った。よく笑うのも、それが理由なんじゃないかと。
でも、真相は分からない。
気がつけば分からないことだらけだ。
人はみな、決まりきった単調でつまらない人生を送るのだと思っていた。
なのに、今は何も分からない。
「まずはともあれ人材確保さ」
それでも、人は歩くのを止められないのだ。