透明人間の色
私の言葉に軽く目を見張った彼は、予想通りの反応を見せた。
「は?」
ほら、こんな女ナンパしても意味ないからどっかいきなさい。
だが、事態は深刻化した。
イケメン風の男が私の手を勝手に握り出したのだ。
「なんですか?」
「本、好きなの?」
「はい」
「俺と一緒じゃーん」
なんだこいつ。本当にこんな軽い感じの奴が好きなのか?
「たぶん一緒じゃないです」
「じゃあ、確かめてみる?」
まずい。策が尽きた。
ならば、もう変人と思われてもいいから、どうにか今日のところはここから逃れよう。
「私、イケメンをこれからナンパしなくてはいけないので、どこか行っていていただけませんか?」
「なにそれ?ってか、ナンパとか絶対慣れてないでしょ」
「何事にも始まりというものはあります」
「ふーん。でもさあ、俺君のこと結構気に入っちゃったんだよねー」
そう言って私の腕をグイグイ引っ張ってくる。
「やめて」
「いいじゃん別に。俺だってイケメンでしょ?」
その時脳裏に浮かんだ顔に私の理性のたがが外れた。
「イケメンとか、イタイ人」
「は?」
私の雰囲気が変わったことに戸惑う目の前の男。
やはり楓は間違っている。
殺してしまいたいほど、この男が嫌いだ。
「___達也はそんなこと言わない」
気がつけばそう口走っていたことにハッとする。
「達也って?」
男が何を思ってるのかなんてどーでもいいけど、そう聞いてくるから私は全てを投げ出して普段なら絶対言わないことを口にする。
「私の一番想ってる人」