透明人間の色
私は今化け物を抱えて日常にすがりついている。
晶人さんがいれば、諦められるはずだった日常に、すがりついている。
そして、いずれ大切だと思ったすべてを壊す。
そんなの嫌だ。決めてたはずなのに、頑張るって決めたのに、諦めるってちゃんと___覚悟してたのに。
なんでっ、こんな今さらっ。
「美香ちゃん」
今すぐに言ってはいけないことを叫びそうになった、その時だ。
「美香ちゃん、今日はさ僕たちの家に帰らない?」
片手でハンドルを握りながら私の唇に人指し指をあてた晶人さんが目に入った。
その瞬間苦しかったのどの奥がすっと力を抜いて、今度は泣きたいような笑いたいようなそんな感情に呑まれる。
晶人さんは私がどれだけ壊れて人間じゃなくなってすべてを壊す化け物になっても、必ず二人だけの世界に連れていってくれる。
私はこの優しい手を離さなければいいだけ。そのために他はすべて切り捨てる。
簡単だ。
「うん。晶人さんとの家に帰る」