透明人間の色
確かに彼を見てたと誤解されるくらいには彼の向こうにある窓とそこに広がる景色を見てはいた。
楓は授業中チラシか私しか見てないから、私の視線の先を知っていても何ら不思議じゃない。
だから、楓にはあの人で通じると思ったんだし。
でも、楓にそんな反応されるとは予想だにしていなかった。
「楓、あの人苦手だったっけ?」
楓が苦手とする人種とは彼はかけ離れているように私は思う。
「うーん……自分と似てるから、苦手かも」
「似てる?」
「うん。だから、美香は気になってるんでしょ?」
楓の言っていることがやっと理解できて、私は笑った。
「私は楓だから友達になったの。独りみたいだからとかそんな理由じゃない」
それはまるっきり嘘だった。
楓が独りではなかったとしたら、友達になる必要など生まれなかっただろう。
でも、私はまだこの日常を捨てる勇気はない。だから、嘘をついてでも偽善者気取るのだ。
「うん。ありがと」
楓も私の言い分に笑ったけど、その陰りのある楓らしくない笑顔は、きっと私の答えを信じてはいない。
バカな楓の扱いは慣れてきたつもりでいたけど、こういう時の鋭い楓は私には扱いにくくて仕方がない。