透明人間の色
「はっ。お前みたいなガキが来るところじゃねえーよ、この店はー」
おじさんがしゃべると、酒臭い臭いが鼻をかすめる。
思わず私は顔をしかめた。
「じゃ、おっさん奢ってよ?」
「あ?なんだこのガキが」
おじさんが霧蒼に殴りかかる。私はその光景を見てるしかなくて、気がついたら霧蒼の頬は赤くなっていた。
だが、霧蒼は涼しげな顔をしているのに気が付いて、背筋がゾクッとする。
おじさんも同じだったのか一瞬動きが止まった。しかし、すぐに元々真っ赤だった顔がさらに赤くなる。完全に怒った。
「あ?なめてんのか、このガキが」
「語彙力のない人だ」
霧蒼がぼそりとそう呟いた。その瞬間、再び拳が霧蒼の顔面を狙って飛んでくる。
が、___それは霧蒼の手にしっかりと阻まれた。
「ここから先は正当防衛になりますから、そのつもりで」
おじさんが繰り出した手が、易々と霧蒼に捻られて、あり得ない方向に曲がる。
「っ~~~」
声にならない悲鳴をあげるおじさんに、霧蒼は初めて微笑んだ。
「もう一本、やっとく?」