透明人間の色




霧蒼の顔は酷く歪んだ。納得いかないことがあるような、気に入らないことがあるような、そんな感じに。

でも、結局はため息のように自分を偽って言うのだ。


「したね」
私はその言葉を待っていた。


彼は本物の偽悪的な人。
それはなんとなく達也と近いが、決定的に違う。




達也が真っ直ぐな人なら、霧蒼は私の言葉にまんまと嵌まってしまった、真っ直ぐに曲がってる人。




そんな彼に私は罠の種明かしをした。



「___じゃあ、私に何を期待してたの?」




「期待なんてしてるわけないでじゃん。何言ってんの」


「何も期待しなきゃ、失望なんてしない」


虚を突かれたような顔をした霧蒼は、次いで唇を噛んだ。


「…期待じゃない」

「じゃあ、なに?」
「イメージだよ」
「変わらないよ。それは同意語」

「………東城、あんたはもっと___いや、僕はもうあんたが分からない」



「奇遇ね。私も霧蒼のことが分からない」


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