透明人間の色
「紫でもそんな………人探しのプロでもいるんでしょうか?」
同じ考えに至った守木がそう言う。
人探しか。
東城美香もイケメンを探していたが、そんなことはこちらに比べれば本当に些細なことなのだろう。
けど、僕にとってそれはどうしても些細なことにはならなかった。
だから、気が向いたらなどと言ってしまったのだ。気が向いたらなんて言ったが、そう言った時点で僕の心は決まっている。
僕は東城美香の彼氏とやらに会うだろう。
そうしたら僕は東城美香のことなんて忘れてしまえるかもしれない。
不意に今日東城美香に、失望したのは何か期待していたからだと言われたことを思い出す。
確かに僕は東城美香の人間性に期待していたのだと思う。
しかし、繁華街でのことがあってからは、東城美香のことがまるで分からない。
興味を失うどころか、気がつけば気になっていた。
でも、“見る”のは癪だし、大体そうしても何も分からないかもしれない。
結果、何しないでいるうちに、東城美香の方からこちらに接触してきたのである。
僕は無意識にため息をついた。
「とりあえず、帰るぞ」
そう偉そうに言ったけど、僕はため息をついていた自分が嫌になっていた。
意味のないため息は好きじゃない。