透明人間の色
「東城」
あれから三日、やっと仕事を前倒しで片付け、僕は東城美香の彼氏と会う時間を作った。
今日は放課後から朝までフリーである。
「なんだよ」
しかし、東城と呼び掛けたのに関わらず、返事をしたのは笹本達也だ。
こいつは多分東城に彼氏がいるなんて知らない。
バスケのユニフォームを着ているところを見ると、笹本達也はこれから部活なのだろう。
もう少し後に声を掛ければ良かった。
「達也、私が霧蒼を呼んでたの」
「は?なんでだよ」
爽やかな顔をして意外にも独占欲の高いこの笹本は、それを隠そうともしない。どうやらデートに誘われたくらいでもう彼氏面というわけらしい。東城に彼氏がいることも知らずにひたすら馬鹿らしい。
「さっさと行くぞ」
「ちょっとくらい待ってよ。………達也。ちょっと、手伝って欲しいことがあって頼んでたの、それだけだから」
なんでこのタイミングで話しかけてきたのかと、東城がこちらを睨みながら笹本にそう言い訳するように言うので、僕は明後日を向いた。
周りの状況を確認しないで話しかけてしまうほど、僕は早く東城に声をかけたかった、なんて誰の得にもならない情報を提供するつもりはない。
まあ、そんなことは置いておいて、僕は東城と達也のこの関係性が気に入らなかった。意味が分からないから。
「手伝い?」
どんどん不機嫌になっていく笹本に、東城はこれ以上は何も言えないというように唇をかみしめている。
僕は見せつけるようにため息をついた。
「___荷物運び。笹本は部活で忙しいし、小野も今日は用事あるから」
「だっ、だからってなんでお前が」
しつこい。
なんて言わないけど、笹本にとったらそれくらい重要なことなのだろう。
たぶん、東城がまた拾い物をしたと思ってるから。