透明人間の色
2 夢と現実
「ここよ。いつもここで会ってるの。さっき連絡したら、遅れてくるから少し待ってだって」
東城に行こうと言ってみたはいいもののどこに行くか聞いてなかった。そうして不本意ながら結局東城の後ろについてたどり着いたのは高級ホテルだ。
ここら辺では、最高級だ。
僕は目を擦った。
ホテルがもの珍しいわけではないし、高校生が来る場所ではないという発想があったわけでもないが、僕はこの高い建築物が目の前にあることを疑っていた。
まさか東城美香に案内されるのが、こんな場所だとは思わなかったから。
しかも、東城美香とその彼氏がいつもここで会ってるという事実にも驚きを隠せない。
そうやって僕が突っ立っている間、東城はホテルの自動ドアを抜けて中に入っていく。僕はそれに慌てて付いていった。
「えっと___ロビーで待ってる?」
僕は東城に追いついて隣に並ぶとそう尋ねた。
だって万が一、二人でホテルの客室で待ってるということだったら、僕はどうすればいいんだろう?
いや、どうするもこうするもないんだけど。
夜景が綺麗だね、とか………いや、まだ夕方だ。
そんな風に僕が色々と妄想していると、東城はこちらを不審そうに見ながら、僕のさっきの言葉に頷いた。
「そうね。その辺に座って待ってましょう」
でも、東城が僕の言葉に素直に頷いた時、僕はホッとしたけど、少し残念だった。
東城と恋人ごっこも楽しそうだったから。