透明人間の色




「そういえば、意外だった」

新たな話題を東城が提示したので、僕はその流れに任せて適当に相槌を打つ。

「なにが?」

「私とかの名前、知ってるの」



「___なんで?」

東城は多分クラスの人の名前を全員覚えるタイプじゃないんだろうけど、自分がそうだからといって、相手も自分と同じだと決めつけたりはしない。

だから、東城に意外だと言われて、僕は少なからず戸惑っていた。

しかし、次の瞬間納得する。

「なんでだろ?今は意外でもなんでもないのに」

「………」

誰にでもキャラの押し付けまでとは言わないが、相手に対してイメージは持ってしまうだろう。

東城もイメージに対してのギャップを持っただけなのだ。

分かればイメージは変わる。そんなものだ。きっとこの瞬間だって、僕の中の東城のイメージは形づくられている。

それは多分、気に病むことではない。

「あっ、あと五分で着くって」

東城がスマホを見て言った。僕は少し背筋を伸ばす。

「ん」



「それにしても早い………」


早口で聞き取れないほどの小声でそう言った東城を、僕はなんとか拾った。

「そうかな?」

「多分。急いで来る理由が出来たのかも」

「彼女と会うんだからそうじゃない?」

「………」

僕が勝手なイメージを言うと、東城が黙り込む。

どうしたのか、と隣を見れば意外な顔があった。



「晶人さんがきたら、そういうこと言わないで」



真っ赤な東城。僕はなんだかその顔をめちゃくちゃにしてしまいたくなった。

「………なんで?」

「彼女とか、調子に乗るから」

「あっそう」

心底どうでも良かった。

でも、僕の意思に反して、僕の中の東城のイメージは確実に形づくられていく。

真っ赤な東城は、東城と思えないほど可愛い。

「その彼氏のどこが好きなの?」

「だから、止めてって」



「だって、笹本達也より好きな理由ってなに?」



「………っ、誰がそんなこと言ったの?」




「は?」




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