透明人間の色






「達也より好きだなんて言ってないけど」




僕はこの時思った。


イメージや常識は恐ろしい。
そしてイメージや常識は嫌になるほど僕たちに、はびこっていて放してくれない。


そして、僕と東城のイメージはおそらく質が違う。


だから、東城は特別で、絶対的だ。




「笹本達也が、好きなの?」

僕はこの時この言葉を上手く普通に言えたかどうか分からない。

でも、東城は丁寧に答えてくれた。



「………誰も特別なんかじゃない」



不自然な間とゆがんだ顔で。

それは多分東城美香が人に罪悪感を抱きながら何かを言う時のくせなのだとすぐに分かった。だって、笹本達也をデートに誘った時の顔と酷似していたから。きっとあの場面で東城を観察していたのは僕くらいだろう。他は笹本達也の反応ばかりうかがっていた。

だから、東城のこの顔の意味が分かってしまうのは僕が僕だからで、僕が僕じゃなかったら良かったのにと僕はいっつも思ってるんだけど、今日はこの時初めて思った。




僕だって、そんなことを言う東城が特別じゃないと平気な顔で言い切る自信なんてないのだ。



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