透明人間の色
「晶人さんっ」
気まずくなってから、本当に五分もしなかった。東城が椅子から立ち上がる。
「やぁ」
来た男はたれ目の優男。
こんなのが東城の彼氏というのも何だか頷けないし、イケメン探しをさせるような変な人でもない気がする。
「君が手伝ってくれる子かい?」
「………」
僕はその言葉を無視した。
この男はまだ信用ならない。
大体手伝いの内容も聞いていない。
そんな僕のようすに、東城と男は顔を見合わせた。東城が肩をすくめて、男はそんな東城に微笑む。
「警戒させちゃっているようだね。そうだな………まだ自己紹介もしていない。良かったら、食事でも食べながら話をするのはどうかな?」
僕はとりあえず頷く。
でも、明らかに不機嫌だと分かるような態度で、だ。
しかし、それを見た優男は満足そうに笑った。
なんだか、気持ち悪いな。
素直にそう思ったけど、何がとは言えない。そして、それが気持ち悪い理由な気がする。
話はついたと言わんばかりに、東城に振り返った優男。
僕はその一挙一動を見つめる。
「行こうか」
「うん」
二人は何でも分かり合っているかのように、短い言葉をかわした。
そして、何度もそうしてきたような自然な手つきで、二人の手は繋がれる。
一瞬見えた東城の顔は、僕の知るものではない。
僕はそんな東城と優男が前を歩くのを、ただただ見ていた。