透明人間の色
「どうして?」
「言って、蒼様の気持ちは変わりますか?」
守木のその言葉に僕は思いっきり前の座席を蹴った。
僕らは互いに嘘はつかないと約束して、互いの隠し事は許している。
でも、守木が僕に隠し事をするのは腹立たしいんだから、仕方がない。
「それ、本気で言ってるの?僕がお前ごときの言葉で変わるって」
「失礼しました」
酷い暴言だった。
けど、僕にはお似合いだから、これでいいんだと思う。
「蒼様はどこまで東城美香のことをご存じで?」
「………何も?クラスメートだってことしか知らない」
嘘じゃない。
本当は東城のことをただのクラスメートでしかないなんて、そんな言葉では表したくなかったけど、ここ最近東城を知る度に僕はそう思うようになっていた。
「ご自分でお調べにならなかったのですか?」
「うん」
「なぜ?」
守木は正しい。
東城美香について知りたければ、組織の力を利用したり、僕が“見る”方がよっぽど効率的だ。
笹本達也とはいつからあんな関係にこじれたのか、なぜ親戚が彼氏になったのか、同じ美術部員に殺意を向けられているのか。
そんなのただのクラスメートでしかない僕には、教えてくれないに決まってる。
だけど、それでも僕は東城自身から聞けるまで、知りたいと思わなかった。