透明人間の色
「こんな日に野郎と二人でプールとか、なにやってるんだろ?」
「涼しいことに意味があるんです。この暑い日にプールに入るのに、誰となんて関係ありませんよ」
「いや、あるね」
「少なくとも、蒼様にはありません」
「___僕が東城と入りたかったって言ったら?」
気まぐれにもそう言ったのは、やはり今日学校に行かなかったことを少しだけ後悔しているからかもしれない。
「それは………お気の毒です」
聞いたのがバカだった。
残念ながら、前の座席というものがないので、僕は少しだけ僕より背の高い守木の頭を掴んで、プールに沈める。
三十秒後くらいに僕の腕力を上回った力で、守木の頭が水から出た。
少しだけ顔を歪めただけの守木の顔を見て、また沈めようと頭を掴もうとする。
「あんまりやると目立ちますよ」
そう守木が僕に正論を叩きつけるので、僕は仕方ないとでも言うように、わざとらしく肩をすくめる。
「じゃあ、僕の機嫌を損ねないことだね」
「善処します」
「少し向こうまで泳いでくる」
「はい。お気をつけて」
その言葉は、僕が溺れることを想定して言っているわけではなかった。だが、僕はそれに素直に頷く。
わかってるよ、という意味をこめて。