透明人間の色
僕はゆっくりとコースを泳いだ。
確かに涼しい。暑い日に学校で勉強をせず、プールでこんな風に泳いでいる高校生がいたなら、それは羨ましがられるか、疎まれるかに二分するだろう。
でも、僕はただ泳いでいるだけではない。
さらに言えば、高校生が来るようなプールでもここはない。
僕の目線の先にはターゲット。
だから、これはただのずる休みとかじゃない。
正義ごっこだ。
僕はプールの壁を蹴って折り返す。ターゲットがやっと三時間の張り込みの末動き出した。
守木と視線を交わして、不自然じゃないタイミングで、僕らはプールを出た。
「ずっと、考えてたんだけど」
ターゲットの後を追いながら、出し抜けに僕が言った。
「東城のことはやっぱり僕は調べないよ」
東城は何者なのか、一晩考え続けた。だけど、それには何の答えもないのだと結論づけた。
だって、東城はどこにでもいる高校生だ。
それが間違っていると言うなら、それは東城を取り巻く人間関係にある。
「その代わり、僕は東城の周りの人間を調べる」
その二つの違いがどこにあるのかといえば、僕の心の持ちようだけだった。
僕はなるべく東城に干渉したくないけど、紫が絡んでいるなら、僕は東城に干渉するだろう紫を排除しなければいけない。
僕は今の東城を見失うわけにはいかない。
東城だけが、僕の欲しい答えをはじき出せるのだから。