透明人間の色
「…そっちこそ、メリットはあるの?」
自分で提案したことだったけど、私は霧蒼がそんなのに乗ってくるとは思っていなかった。
霧蒼はたぶんお金持ちだし、高校生らしからぬ変なこともしているみたいだから、私ごときが一つ霧蒼の言うことを聞くことに、何のメリットも持たないように思う。
私にできることは霧蒼にもできるし、霧蒼にできないことは私ができるわけがない。
「ある。僕は自分のメリットになることしかしない」
それは嘘だ。
霧蒼がどう思っていようと、霧蒼は偽悪的で、誰かのために動ける人間。それが私の中の事実だ。
でも、そんなの敢えて指摘することではない。
私はこの偽悪的な霧蒼に一縷の希望を残しているのだから。
「そっか」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
私はハンバーガーにかぶりつく。
健康的ではない味なんだろうけど、私は割りとこんな味が好きだ。人工的で何の言い訳もしてないこの味が好き。
無農薬とか有機野菜とか、無添加だとか。私はそう言うのを否定するつもりはない。
むしろ、健康的な食品はとても素晴らしいと思う。
だけど、こう言った体に悪いですと悪びれもなく主張してくる商品が、私は好きだ。