透明人間の色




「…そっちこそ、メリットはあるの?」

自分で提案したことだったけど、私は霧蒼がそんなのに乗ってくるとは思っていなかった。

霧蒼はたぶんお金持ちだし、高校生らしからぬ変なこともしているみたいだから、私ごときが一つ霧蒼の言うことを聞くことに、何のメリットも持たないように思う。

私にできることは霧蒼にもできるし、霧蒼にできないことは私ができるわけがない。


「ある。僕は自分のメリットになることしかしない」


それは嘘だ。

霧蒼がどう思っていようと、霧蒼は偽悪的で、誰かのために動ける人間。それが私の中の事実だ。

でも、そんなの敢えて指摘することではない。


私はこの偽悪的な霧蒼に一縷の希望を残しているのだから。


「そっか」

「うん」
「じゃあ、いただきます」

私はハンバーガーにかぶりつく。

健康的ではない味なんだろうけど、私は割りとこんな味が好きだ。人工的で何の言い訳もしてないこの味が好き。

無農薬とか有機野菜とか、無添加だとか。私はそう言うのを否定するつもりはない。

むしろ、健康的な食品はとても素晴らしいと思う。




だけど、こう言った体に悪いですと悪びれもなく主張してくる商品が、私は好きだ。




< 92 / 248 >

この作品をシェア

pagetop