透明人間の色
「じゃあさ、浮気はやめたってこと?」
突然、霧蒼がそう言った。私は首をかしげる。
「浮気?」
「笹本達也、そいつとデートの予定じゃん」
私は霧蒼がそう言ったことに驚いて、ハンバーガーをモシャモシャしながら目を見開くはめになった。
「なんで知って………?」
「クラスで堂々宣言しといて、なんでって。わざとじゃなかったの?」
そう言われて、あの時の状況を思い出した。
そう言えば、躍起になっていて、周りは全然気にしていなかったような気がする。いつだったか達也が私の彼氏なのではと霧蒼は疑っていたし。
「…その場の思いつき?」
「思いつきで浮気するの?」
珍しくよく食いついてくる霧蒼に、私は苦々しく誰にも言ってないことを、口にする。
「___どっちかって言うと、浮気を止めるため?」
「なにそれ?」
軽く返してくる霧蒼。これ以上は答えられない。
「なんだろうね」
どこまでも曖昧な私に、霧蒼はわざとらしく肩をすくめて見せる。
「あっそう。………今日もあのマンションに帰るの?」
「あの?」
私はその質問に首を傾げる。
あのって、私のマンションに何かあったっけ?
「なんでもない。…きっと、ね」
「私、マンションって言ったっけ?」
「言ってなかったとしても、僕に隠し事はできないよ」
「まあ、そっか」
議員を追い落とす高校生に、私の住所くらい十秒もあれば分かってしまうのかもしれない。
「今日は晶人さんとの家に帰るけど」