源氏名・ゆい





那千君は慣れたように、ウサギのかぶりものにキャッチャーを近づけた


まさか取れるわけないと思っていたが


「あ……」


ウサギが上手い具合に引っかかり、なんと取れてしまった


「マジ?やった!」


那千君は嬉しそうに取ると、私の頭にかぶせた


「ちょっと!?」


「はは!ヤバい、めちゃ可愛い!」


か、可愛い?


那千君は笑いながら私の頭をポンポンとした


私、子供扱いされてる?


いつも大人っぽいとか言われてきたから、子供扱いされた事がなかった


なんだか恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが混ざり合って、この時の私はきっと顔が赤かったと思う


「愛美ちゃん、ウサギっぽいもんな!」


「ウサギ?」


「ウサギって寂しすぎると死んじゃうんだよ。」


私の頭に手を乗せながら那千君は言った


那千君は深い意味で言ったんじゃないっていうのは分かる


でも


私は見透かされているように感じた




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