熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
社長室への廊下に踏み出すと、優月はかなり速足なのか、その背はもう半分以上先に進んでいた。
その後を追って、私も軽く走る。


私が追いつくのと同時に、優月が社長室のドアを開けた。
彼は私を肩越しに見下ろし、頭を抱えるようにして社長室の中に押し込む。
私は抱え込まれたまま、強引に身体ごと回転させられた。


「ひゃっ」と思わず声をあげた瞬間、背後で閉まったドアに背中を押さえつけられる。
驚いて顔を上げると、優月が私を囲い込むようにドアに両手を突っ張った。
状況を把握した途端、私の胸の鼓動は再び大きく跳ね上がる。


「……ほらな、やっぱり」


優月は私の目の前で顔を俯けて、はあっと声に出して溜め息をついた。


「この程度のことで、俺、滅茶苦茶緊張してる」

「き、緊張って……! だって優月、この間……」


素で泣くほど優月を怖がったことを思い出し、私はムキになって言い返した。
優月はどこか不満そうに眉を寄せる


「あれもお前を奪われるって触発されたから……でも綾乃が本気で怖がって泣いてくれたから、恥ずかしいよりも聖域を穢した自己嫌悪の方が強くて」


ふて腐れたように呟く優月に、私も真っすぐ目を向けられない。


「優月……」


戸惑いだけを強めて、目の前で揺れるちょっと乱れた優月の前髪ばかりを見つめた。
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