熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
私の視線を感じているのか、優月は「でも」と少し低めた声ではっきりと呟いた。
そしてわずかに顔を上げ、私を上目遣いで正面から見つめてくる。


彼の茶色い瞳に、私が大きく映っている。
それを意識して、静かな淡い鼓動が、胸に波紋のように広がるのを感じた時。


「俺は綾乃を、手放してやれない」


優月の瞳に、確かな力が宿った。


「婚約解消から何度も葛藤して、柄にもなく思考の端と端を行ったり来たりした。それでも根っこから変わらないのは、その気持ちだ」


優月は声の力を強めて言いながら、ドアに突いた手をギュッと握り締めた。
瞬きを繰り返すだけの私に、彼はゆっくりと言葉を重ねた。


「この先ずっと、綾乃が本気で愛していいのは俺だけだ。……そう願う気持ちだけは、止められない」


淡い鼓動を打ち出していた心臓が、大きくドクッと跳ねた。
その後、きゅうっと胸が締めつけられるような感覚に襲われる。


保護者としてのものでしかなかった優月の過保護が、一人の男として向ける独占欲に変化する瞬間を見た気がした。
今まで私を意識しないようにしていたという優月が、私への見方を変えた。
その表れのような気がして、私はどう答えていいのかわからない。


「……困った顔してる。綾乃は俺のことどう思ってる?」


優月はわずかに苦笑して、私を探るようにそう訊ねてきた。
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